鉾立から御浜小屋へ──変化に富んだ夏山の気象劇を歩く
朝7時20分、鉾立登山口(標高1156m)の駐車場に車を滑り込ませると、夏雲が眩いほどに青い空を彩っていた。標準ルートの出発点だけに登山者の姿もちらほら。
身支度を整え、7時40分に歩みを進めると、木道や石畳が続くしっかりと整備された登山道にほっと胸を撫で下ろす。気温23度、朝の空気は爽やかだが、太陽の直射は容赦なく額に汗をにじませる。
歩き始めて30分ほど──予想以上の暑さに身体が悲鳴を上げ、熱中症の気配を感じる。
急ぎ背面ザックから塩タブレットを取り出し、ミネラルウォーターで一気に流し込む。
木陰の切れ間で頭から水をかぶり、約40分の休憩。頭痛が和らぐと同時に身体が軽くなり、再びゆっくりと登山を再開した。
真夏なのに冷たい雨が
足元にはコマクサやイワカガミ、ハクサンチドリなど高山植物が群れ咲き、疲れた脚を優しく癒してくれる。標高を上げるにつれ、次第に雲行きが怪しくなり、ひんやりした小雨が氷の粒のように頬を打つ。
すれ違う登山者から「山頂付近は雷雨と土砂降りになっている」との情報を受け、背筋がぞくりと冷たくなる。
標高1700mの御浜小屋に到着すると、空は真っ暗な雲に覆われ、遠くから雷鳴が響いていた。だが、小屋の軒下で待つうちに雲が割れ、青空が徐々に姿を現す。
再出発の頃には風が乾き、厚い雲海の合間から太陽光が差し込む。
正午前、山頂の祠(標高2236m)に立つと、一面に広がる深い緑の稜線と、その先にきらめく日本海の青が目に飛び込んできた。
3人で手早く昼食を頬張りながら、「この景色を待った甲斐があった」と笑い合う。
山頂から見る日本海は、夏の陽炎で淡くにじんでおり、水平線にはイカ釣り船の灯りが小さく瞬く。



下山は午後2時過ぎに開始。夕暮れが迫る中、刻一刻と変わる空の色を追いながら慎重に足を運ぶ。
かすかな涼風に汗が引き、ライトを点けたヘッドランプの小さな光が足元を照らす。
駐車場に戻る頃には、茜色の夕陽が日本海を朱に染め、静かな達成感が胸を満たしていた。
水がなくなってしまうピンチ
ちなみに、水は出発時に2.5L携行したものの、御浜小屋手前で底を突き、500ccのペットボトルを500円で購入する羽目に。だが、その清冽な一口が身体に沁みわたり、下山を支えてくれた。暑さや天候急変に翻弄された一日だったが、鳥海山の夏山らしいダイナミックな気象劇を肌で感じ、眩い景色を心ゆくまで堪能できた登山となった。
ちなみに、水は出発時に2.5L携行したものの、御浜小屋手前で底を突き、500ccのペットボトルを500円で購入する羽目に。

ちなみに、水は出発時に2.5L携行したものの、御浜小屋手前で底を突き、500ccのペットボトルを500円で購入する羽目に。
だが、その清冽な一口が身体に沁みわたり、下山を支えてくれた。暑さや天候急変に翻弄された一日だったが、鳥海山の夏山らしいダイナミックな気象劇を肌で感じ、眩い景色を心ゆくまで堪能できた登山となった。