酒乱は深夜の悪夢!?仙台個人タクシー運転手、33年の修羅場体験

タクシー体験談


酒乱は深夜の悪夢!?仙台個人タクシー運転手、33年の修羅場体験

33年、タクシーのハンドルを握り続けてます。
多くの「人生の修羅場」を経験してきました。

夜の街、光と影。サラリーマンの笑い声、キャバクラ嬢のハイヒール、酔っ払いの遠吠え――。
この街の夜を、私は誰よりも間近で見てきました。

そして、そんな私が33年この仕事をやってきて、唯一「怖い…!」と感じるのが――

酒乱の乗客。

今回は、そんな“夜のモンスター”たちとの遭遇記録を、笑って読んでいただけたらと思います。
…いや、笑ってくれないとやってられません(笑)。


深夜2時、地獄の神明町ラプソディー

深夜2時、仙台市役所前に佇む一人の男。
千鳥足でこちらに向かってくる。お察しの通り、すでに出来上がっている。

私「どちらまで行かれますか?」
男「神明町までだ!」

まあまあのテンションである。
「これは当たりか…?」と警戒しつつ出発。

すると開口一番。

男「〇〇(※私の名前)、おめえなー、運転おせえんだよー!」

……あれ?俺、あなた初対面ですよね?

何が何だか分からぬまま、「どうされましたか?」と尋ねると、

男「おあええっつったらおせえんだぁあああああ!」

もう日本語が通じない。いや、日本語だけど、通じない。

そして、

「気に食わねー野郎だ!」
「どこの道走ってんだコラァ!」
「このやろぉぉぉぉお!」

ドライブ中にカラオケでも始まったのかと思うほどの大音量。
こっちは「5分我慢すれば」と念仏のように唱えながらアクセルを踏む。

が、限界は来た。

私「お客様、この先の運転は難しいので、降りていただけますか?」

男「降りねえぇぇぇぇ!!」

うん、でしょうね。
というわけで最終兵器を発動。

私「では、通町交番に向かいます」

ピタッ……。
まるでスイッチが切れたように静かになった。これはこれで怖い。

交番に着くと警察官が不在。でもインターホンで呼ぶと警察官がパトカーで帰ってきた。
私が事情を説明すると警察官が優しく男に声をかける。

警官「旦那さん、何かあったの?」

男「……いや、何も……」
※5分前に「このやろぉぉぉぉ!!」と叫んでた人とは思えない小声。
さっきまでの威勢はどうした!

警官「運転手さん、お金は?」
私「まだ頂いてません」
警官「じゃあ旦那さん、お支払いして歩いて帰ろうか」
男「……はい」

財布を取り出す手がプルプル震えていたのは、寒さのせいではない。

私が車に戻ると、男はすっかりしょんぼりモードで、北仙台駅方面へとぼとぼ歩いていった。

警官「けっこうあんなのいるよ〜。もっとひどいのもいるから気をつけっぺね」

なんとも頼もしいセリフ。
警察官って、地味に“酔っ払い対応”のプロなんだと感心した夜でした。


国分町、ダブル酒乱の夜

次の事件は、仙台の夜の繁華街・国分町。
その中心にそびえ立つ黒ビル前での出来事でした。

深夜1時すぎ、スーツ姿の男二人がタクシーに乗り込んできた。

男A(ガタイでかい):「八乙女まで、急いでくれ」
私:「承知しました」

※タクシー業界では「承知しました」がデフォルト用語。丁寧で万能。

しばらく走ると、後部座席で異変が。

男B(小柄な方):「なんでおめーが一緒にのってくんのやぁ!」
男A:「心配でっしゃー……」

ここで私、嫌な予感が全身に走る。酒乱レーダー発動。

案の定、台の原を過ぎたあたりで小柄な男が暴れ始める。

男B:「おめーもほんだけんと、あの課長、いつかぶんなぐってやっつもりだったんだよぉぉおおおお!」

急に職場の恨み節が始まった。しかもかなりリアル。

床をドンドン蹴りながら暴れる小男を、180センチ超えのガタイ男が抑えにかかる。

いや、逆でしょ普通!?
と思いきや、やっぱり酒乱は“馬鹿力”を発揮するらしい。

タクシーはすでに臨戦態勢。私はスピードをあげて目的地を目指す。
乗ってすぐの「なるべく急いで」の意味が、ようやく腑に落ちた。

やっとのことで八乙女に到着。降りるときもドタバタ。

が、ここで救世主登場――ガタイの大きな男が、暴れる小男を力づくで家の中へ押し込む。
玄関からは奥さんが出てきて、何度も深々とお辞儀。

…気の毒なのは私よりむしろこの奥さんかもしれない。

数分後、そのガタイ男が再びタクシーに戻ってきた。

「すみませんでした…。あいつ昔から酒癖悪くて…」

そう言って、丁寧にタクシー代を払い、深々と頭を下げた。

なんだか、泣きそうになった。
世の中、まだちゃんとした人もいるんだなって。


酒乱という名の「走る地雷」

タクシーを33年やってきた中で、乗客の酒乱率はそこまで高くはありません。
しかし「当たり」を引いたときの破壊力は、まさに地雷級。しかも走行中に爆発します。

しかも酔っ払いって、自分が正しいと信じて疑わないから厄介なんです。
会話のキャッチボールじゃなくて、ピッチャーがずっと剛速球投げてくる感じ。


最後に

もしあなたが酔っ払ってタクシーに乗ることがあるなら、ひとつだけ覚えていてください。

運転手はお酒を飲んでいません。

酔ってるあなたと、シラフの我々。
この非対称バトルに勝者はいません。

だから、せめて――

叫ばない!吠えない!
蹴らない!
警察署まで連れて行かせない!

これだけ守っていただければ、我々タクシードライバーは今日も平和にアクセルを踏めます。

さて、今夜も仙台の夜を走ってきます。

お願いだから、今日こそは“当たり”が来ませんように――!


※酒乱にまつわる体験はまだありますので後日また。

プロフィール
書いた人
はたもん

こんにちは。仙台で個人タクシーを営んでいます。
「少しの間だけ」のつもりでしたが、気づけばこの道一筋のタクシー歴33年です。平凡な私でも33年の間にはいろんなことが起きました。
このブログでは、そんなタクシードライバー目線の仙台をお届けします。
仕事の体験談や趣味の山歩き・スキー・写真撮影についてもゆるっと綴ってまいります。どうぞよろしくお願いします。

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