雲海と紅葉の大パノラマ
秋風に誘われ、私は仲間3人と秋の朝日連峰へ足を踏み入れた。
北の出羽三山、南の飯豊連峰とともに磐梯朝日国立公園を構成するこの山々は、大朝日岳を主峰とし、その美しい稜線がアルプスを思わせる。
紅葉が盛りを迎えた稜線は、赤や黄の絨毯が青空に映え、思わず息を呑む光景だった。
今回は稜線の雄大な景観をドローンで収めるため、「入林許可申請」を東北森林管理局置賜森林管理署と関東森林管理局下越森林管理署村上支署へ提出した。
置賜署は申請翌日に許可がおりたものの、下越村上支署は約一か月を要した。
それでもメールでの受け付けが可能になり、以前よりずっと気軽に申請できるようになった。
──10月5日(木)曇り
雨予報を受け、出発を一日ずらして早朝3時半、赤間さんに同乗せてもらい仙台を発つ。車中には深田さんと村井さんが乗っていた。日の出前の国道を走り、2時間半後に日暮沢小屋へ到着。
気温10℃以下、まだ紅葉は始まったばかりだ。
背中の15kgのザックは、ドローン撮影機材のギアも詰め込んだためだが、ひんやりした空気のせいか苦にならない。
清太岩付近でようやく紅葉の彩りが増し、標高を上げるにつれ西風が舞い、雪片がひらりと頬をかすめた。小雪の舞う中、上空で大きな鳥の鳴き声が聞こえたので見上げると、数十羽の白鳥が編隊を組んで日本海側に飛んで行った。
15時、竜門小屋に到着。先客とともに小屋のベンチで夕食を取り、静かに夜を待った。



──10月6日(金)曇りのち雨
午前3時起床、ヘッドライトを灯し、鶴岡や酒田の夜景を背に歩き始める。雲海に浮かぶ以東岳や鳥海山が朝日に染まり、一面のパノラマに胸が高鳴った。
6時には西朝日に立ち、360度の展望を堪能。小屋へ戻り軽く食事を済ませ、大朝日岳山頂へ向け最後の急登をこなす。
西朝日岳山頂は、澄んだ空気の中で秋田駒ケ岳や岩手山までもが望める絶好のロケーションだった。
はじめは目を疑ったが、この場所から目視できるなんて信じられなかった。一年にそう何度も来ないチャンスだったと思う。
下山は雨具をまとい、小朝日岳の登り返し付近から土砂降りに。滑りやすい道を慎重に下ったが一度、泥道と化した急坂でヘッドスライディングしたが、日暮沢小屋まで約5時間20分かけ無事到着。
途中深緑が濡れて艶めく滝を背に一枚撮り、ずぶ濡れのまま車へ滑り込む。
帰路の道の駅であたたかいコーヒーを手に、深まる秋とともに歩き切った満足感に浸った。






