【爆風と友情と落とし穴】3月の蔵王でスキー登山してきた話



2024年3月14日。世の中はホワイトデーだが、我々にとっては“ホワイトアウトデー”だった——。
どうもこんにちは。今回は、みやぎトレッキングクラブの月例登山の様子をお届けします。私が幹事を務めたこの日、天気予報と5時間にらめっこしながら選んだ「比較的マシな日」。それがまさか、あんな壮絶な修行の日になるとは…。
登山者はたったの3人。だけど妙に濃いメンバー
春といえば、うららかな日差しと鳥のさえずり。…のはずが、山の中ではまだまだ「冬将軍の天下」。登山予定者の多くがキャンセルする中、最終的に残ったのは、
- 筆者(幹事なのに天気運が壊滅的)
- 赤間さん(元気印、そして穴落ち名人)
- 大友会長(冷静沈着、でもちょっと天然)
という3人。仙台を朝早く出発し、蔵王ライザスキー場の駐車場に午前9時到着。冬の蔵王ということで、今回は山スキーでのチャレンジです。
リフトに乗ってスタート地点へ。「今日はイケる気がする!」
リフトを乗り継ぎながら標高1,446mの出発点へ。空はまだかろうじて青空が見え、「お、今日は意外と大丈夫かも?」なんて油断し始めた頃でした。
シール(スキーに装着する滑り止め)をつけ、GPSと地図を手に出発。風で雪は吹き溜まり、ところどころアイスバーン。「自然って芸術家だよね…いや、嫌がらせのプロか?」などとツッコミを入れつつ、目印のポールを頼りに進みます。
徐々に視界が…そして伝説へ(ホワイトアウト)
標高を上げるにつれ、天気はみるみる悪化。「ん?さっきまで見えてたポールが見えないぞ?」という状況から、ついには完全なるホワイトアウト。まして樹氷を眺めている余裕もない。
そんな中、突如として白いモヤの中に黒い影。「熊!?」と思いきや、避難小屋でした。ドキドキを返してほしい。
しかしこの小屋、入口が雪で封鎖されており、入れないというオチ付き。風下で小休止しながら、「この先進めるか?どうする?」と三人で会議。ポールも見えず、頼れるのはGPSと紙地図だけという、まさに現代と原始の融合。
奇跡の出現、半分埋まったトイレ
登ること2時間、急に目の前に現れたのは——雪に半分埋もれたエコーライン山形側のトイレ。
「うおおお、文明の象徴!」と感動しつつ、ここで風を避けながら昼食。湯気の立つコーヒーに、心も身体も一瞬だけ回復します。
とはいえ、ここから刈田岳の山頂までは標高差200mほど。普通なら行けそうな距離ですが、天候はさらに悪化し、もはや1メートル先も見えないレベルに。
赤間さん:「こんでは、だめだなやー!」
大友さん:「危ないからやめましょう!」
私:「ほんだなやー!」
仙台弁の即決定会議。満場一致で下山開始となりました。
そして赤間さん、消える。

「赤間さーん!!」と叫ぶと、「おーい」と聞こえる。声のする方へ進むと、そこには木の周りにできた巨大な穴。そして、もがく赤間さんの姿。
ザックが引っかかり、起き上がれない赤間さんを、ストックと素手で引っ張り上げる。曰く、「前が見えなくて、気づいたら落ちてた」とのこと。うん、まあ、そうだよね…。
紙地図とコンパスのありがたみ、改めて実感
このあたりから、ポールも赤布もまったく見えず、完全なる「感覚を信じるゲーム」状態。幸いGPSはまだ動いており、紙地図とコンパスを駆使してルートをなんとか確認。
なお、その後赤間さんはもう2回、穴に落ちました。そのたびに救出する私たち。まるで落とし穴のモグラ叩きならぬ、「赤間さん叩き」状態です。
無事、ゲレンデへ。そして安堵のラストラン
そんなこんなで、ようやくリフト乗り場に到着。ゲレンデに入ると、視界は相変わらず悪いけど、コースは滑りやすい。あとは一気にスキーで滑り降りて、無事に駐車場へと到着しました。
「ふぅ…生きて帰れてよかった…」
全員の顔に書いてあるのは、この一言だけ。
自然は舐めちゃいけない。でも笑い話にはできる。

今回の蔵王登山、言ってみれば「荒天×友情×スキー×穴×コーヒー」のフルコンボ。確かに天候は最悪だったけど、その分仲間との連携や、装備の重要さをひしひしと感じる一日でした。
ちなみに、帰宅後に飲んだビールはいつもの10倍美味しかったです。
それではまた、次の山でお会いしましょう!